ひめくさ

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女子高生天才女流棋士が転生したら戦国時代だった 第一話


 令和四年十二月京都市中京区の近く、京都能楽堂会館で真女流名人戦が始まろうとしていた。対局者は二五歳の堀尾羅美亜真女流名人と女子高生の大橋想子二級である。
 対局場は能楽堂の舞台になっており、本舞台に将棋盤がおかれていて袖の広い袴に弓形の眉毛に切れ長の眼に長いまつげの堀尾真女流名人は悪役令嬢のように対局相手を見下している。一方のボブヘアで洋装の大橋二級は二重で瞳の大きな顔である。この十五歳の瞳の大きな美少女は盤面ではなく、振り返って奥の通路である橋掛かりの方を見ている。
 本舞台の前で、将棋の立会人や記録係が対局場の正面に居る。
 対局舞台の正面から向って左寄りに、重鎮の市会議員、少し席を空けて、囲碁棋士能楽師等関係者、一般見学者数名が客席の正面付近に集中して座っている。
 抽選で当選した見学者の一人が新米刑事の吉川で、棋力はアマ初段である。マスコミのカメラマンも一名後ろで待機している。

 本舞台の手前には将棋盤を映す大きなモニタが置かれている。
 先手の堀尾真女流名人が2六歩と指してカメラのフラッシュが光る中、舞台の左奥通路から何かが駆動する音が響いてきた。
 吉川は思わず声を上げた。
「あれは何だ」
 関係者席もざわつき始める。
 舞台奥の通路である橋掛かりの前にある幕から、電機駆動の車椅子がゆっくり現れる。吉川が確認すると、車椅子に乗っているのは可憐な女性の能面をつけて白装束を纏った人物のようである。
 ゆっくりと車椅子は本舞台の後ろである後座に向けて進む。
 対局している二人の近くだ。

 突然、堀尾真女流名人が立ち上がって廊下を指さした。
「血よ、血が落ちている」
 橋掛かりの通路には血の跡が点々と滴り落ちていた。
 電動車椅子が対局場の本舞台まで迫ってきた。
 突然舞台奥の通路である橋掛かりの前にある幕の奥から、爆発音が聞こえた。
 フラッシュが一斉の幕の奥に集中する。白い煙が立ち込めている。
 堀尾真女流名人が車椅子に座っている人物の胸元を広げた。
 堀尾真女流名人が再び叫んだ。
「ナイフが胸に刺さっている」
 それから大橋二級が目を輝かして早口で後ろから覗き込み、
「これは殺人事件よ。ためらい傷も無いし、ぐさりと心臓一突きね」

 吉川は立ち上がって周りに言った。
京都府警です。救急車と捜査員を呼びます。現場は触らないでください。しばらくこの場にいてください」
 そのあと本舞台に駆け上り白装束の人物に駆け寄った。
 しばらくして救急車と捜査員が到着した。
 座っている人物は三十代の女性で、車椅子に座っていた時点ですでに息を引き取っていた。
 吉川は何故か女子高生の大橋二級と目が合った。
 大橋二級が「今晩、明晰夢を見るかも。一緒に来て」
 捜査で目まぐるしくその日が過ぎて、京都府警の仮眠所で少し吉川は目を閉じた。仮眠室のベッドで眠っているときに横に誰かが来たような気がしたが眼は覚めなかった。

 吉川が目を開けると何かおかしい。横には瞳の大きな整った顔立ちの十五歳の少女が座っていて吉川を見つめていた。
「おはよう。天正十九年というと豊臣秀吉が太閤になった年かしら」
 そこは1591年の京都だった。

 

 

 

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